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知ってほしいGoogleのレイオフが抱える問題

Googleは全世界で12000人規模の大規模な整理解雇を行いました。Google Japanも例外ではなく、社員の6%程度、約200人が対象になったと見られています。GoogleCEOのスンダー・ピチャイは社員に対し、各国での法律に従うとメールを送りましたが、実際には日本で行われた組織再編成には、たくさんのほころびがありました。特にひどいのは、産休・育休中の社員も対象となっていることです。これでは安心して子供を産むことができないという声が社員から上がっています。特に大きな問題点を三つに整理しました。

説明がないことの恐怖と退職への圧力

一つめは、退職対象者に対しての説明不足です。会社は、団体交渉で組合に、対象者には理解を求める対応や丁寧な説明を行ったものと説明していますが、実態はまったく異なります。会社からの通知は「あなたのロール(チームでの席)は組織再編成の影響を受けた」というものでした。ジョブ型で採用された社員にとって、「ロールはなくなったが会社に居続ける」という状況は想像しがたいもので、強制的な解雇だと理解した社員も多くいました。対象者は、「2週間以内にサインすれば早期退職金を支払う」とだけ説明され、どんなに説明を求めても、頑なにサインしなかった場合のことはまったく説明されませんでした。期日が迫る中、会社から対象者に追加で送られた今後のことを説明するメールの中には、「断れば、あなたの仕事は変更になり、社内システムへのアクセスを制限する可能性がある」とも記載されていました。日本に先んじて本社で行われた、ロックアウト解雇と同じことが、いよいよ日本でも起こるのだと思ったと、対象者と語ります。会社の説明が不足する中、対象者は2週間という短い期日の中で、少ない情報からの判断を迫られました。
断ったら早期退職金パッケージも得られず、解雇されると思い込み、サインした方からの相談が組合に寄せられました。組合の把握している範囲で、少なくとも6名の方が、産休育休中に対象となり、うち4名がサインをしています。この4名は誰一人として、子供を抱えたこのタイミングでの退職は望んでいませんでした。恐怖で追い詰めるこのやり方は、労働者のみならず、職場の雰囲気も悪くし、会社も信頼を失い、誰にとっても合理的なものではありません。組合には、労働者を代表し、こういった非生産的な悲劇を防ぐ役割があります。 実際に、対象者が想像したシナリオの一部は現実になっています。退職勧奨に同意しなかった社員には、いつ解散するかわからない、同意しなかった人だけが集められた一時的なチームへの異動を命じられるケースも見られます。こういった人たちは、不当に低い業績評価を受け、今年の春に支払われるボーナスやストックオプションなどが減額されるのではないかと懸念されています。積み上げてきた本人のキャリアを断絶する対応であり、労働組合としては許せるものではありません。

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一方的な退職条件

二つめは、その後の退職条件の交渉が一方的だったことです。本来、退職勧奨とは、会社と労働者が話し合い、お互いが合意できる退職日、退職金を話し合うものです。今回の会社のやり方は一方的に条件を突きつけるのみで、個別の事情に合わせた調整をする姿勢はまったくありませんでした。退職日は一律5/31とされ、産休、育休、病休などでそれ以降も長期休暇を取る予定だった人たちであっても、切り上げて5/31で退職となりました。私たちは、育休・産休中の対象者については、育休・産休の最後までの在籍を認めるよう、団体交渉で会社に配慮を求めました。退職となれば、保育園を利用できなくなること、子供を抱えて転職活動をすることは非現実的であること、会社での在籍を失ってからの転職は、そうでない立場より難しくなること、などが理由です。子供との生活のかかった切実な願いでした。しかし、会社は一貫して「5/31付けの解雇」という形を変えることはありませんでした。
育休・産休中の給与は地方自治体から給付され、会社が支払っているわけではありません。会社には金銭的なダメージはないにも関わらず、まったく譲りませんでした。本当に経営立て直しのために必要な労働力削減であれば、断る合理的な理由はありません。会社のブランドを傷つけ、労働者の信頼を傷つけるばかりで、得のない選択です。グーグル日本法人は、親会社からの圧力に従い、思考停止で機械的に支持されたレイオフを行ったため、こういった事態に陥ったのだと、組合は考えています。本社は各国の法律を守ると言っているのですから、日本法人が責任をもって、労働者と対等に向き合い、退職のための話し合いを行うべきだったと考えています。

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必要性の説明の不足

三つめは、レイオフの必要性の説明が不足していることです。タウンホールが開かれ、説明は行われましたが、抽象的な説明に終始し、経営上の具体的な数字などは説明されませんでした。人の人生に大きな影響を与える選択を行うにあたって、本人にその必要性を説明するのは当然の責任です。法的にも、会社は労働組合が説明を求めた際には、誠実に説明する義務があります。しかしいまだに、会社から経営状況や、経営予測を示すデータは出されていません。 Alphabetの株主向けに公開されているインベスターリレーションズでは、Googleはここ数年黒字続きで、レイオフの必要性が納得できる数字ではありません。レイオフを行うからには、経営上の数値や予測を示しながら、なぜ必要なのか具体的に説明し、目指したい経営目標数値や、そのために何人の削減が必要なのかなど、労働者に誠意を尽くして説明するのが当然ではないでしょうか。

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社会に信頼される企業にふさわしい対応を

2022年末と2023の頭では多くのIT企業でレイオフが行われましたが、日本法人で組合が結成され、対抗している会社は多くありません。組合が存在し、機能していることは、会社にとってはブランドと労働者への信頼を取り戻すチャンスだと思っています。経営数字を説明し、強引な退職勧奨の被害を補填し、今後は誠実に組合と話し合いながら労働者の待遇を決めていくことで、信頼を取り戻してほしいと思っています。

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